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secret heart plus

さきっぽのGH二次創作ブログへようこそ。

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涼しいですねー。

東京は久々に雨でございます、涼しくて快適!

朝からクーラーつけなくて良いってすごい。
我が家ではウサギがバテバテなので多少の暑さでも最低ドライにしなきゃなのですよ。
夏場に仕事持ち帰った日なんかは煙草もろくに吸えなくてぶっつぶれてますー(´・ω・`)




さて…更新なのですが、私情でのろのろ以上の有り様です。
ってゆーかイベントからこっち何もアップ出来てないですが。
急遽引っ越さなければならなくなり、先日ようやく家が決まったところです。
今は仕事の合間に荷造りやら各種手続きやらに追われております><

もう少し落ち着いたらまた創作を再開したいのですが、今は新しいお話を書いてる余裕がありません。
もしかしたら近いうちにストックを一本アップ出来るかなー…ぐらいで(脱力





今日まで拍手をくださった皆様、ありがとうございます!
特にお返事する内容はなかったので、ここでまとめて失礼しますー。

以降更新のお知らせを予約投稿の時だけにするので、また多少見易くなるかと。
これからもよろしくお願い致します。
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  1. 2010/07/29(木) 11:48:50|
  2. 徒然日記
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windfall 後編




「二人は嘆き悲しみ、周囲の人々の忠告に耳を貸さずにいた己を恥じ、毎夜涙を零します。恋しくて切なくて、会いたくて、食事も喉を通らない。動くことすらままならなくなった二人は、床へ伏す事が多くなっていきました」


悲しそうに瞳を伏せた彼女の瞼に触れた。
ぴくんと震えたそこへ唇を落とし、縁をなぞる様に舌を滑らせる。
いらぬことまで言ってしまった事を少し後悔した。
彼女の性格を考慮するならばもう少し簡潔に話しても良かっただろうか。


「次第に痩せ衰えていく織女と牽牛のあまりの悲しみように、天帝はある条件を出しました。互いを想い合い生涯を正しく真面目に暮らすと言うのならば、年に一度、七夕の日に会う事を許そう」


やっと瞼を上げた彼女に薄く笑みが零れる。
ほんとうに分かりやすい、優しい女性だ。
小さな身体を腕の中に閉じ込めて強く抱きしめた。
顎に触れる柔らかな髪に頬を寄せて息を吸い込むと、甘い香りが鼻を突く。


「こうして二人は年に一度、七夕の日に再会することになったのです。二人は共に居られる事、触れ合うことの大切さ知り、一年間の淋しさを心に秘め、会えない時間を惜しむ訳でもなく、七夕の夜には幸せに睦み合うと」


そう締めくくると、一気に身体の力を抜いた彼女が感嘆の声を漏らす。
満足そうなその声音に背中を摩るように撫で上げれば、身じろいだ彼女が見上げてくる。


「なんかすごい。大まかにしか知らなかったけど、なんていうか、すっごいや。人の振り見て我が振り直せ?」


あれ…ちょっと違うかなぁ、と首を傾いだ彼女に噴き出してしまう。
恋愛に夢中になり過ぎている男女には教訓になる話でもあるのだから、そうとも言えるだろう。
ただ実際そういった場合に引き離されるかそうでないかといえば、明らかに後者が多いのも事実だ。
やはり伝説は伝説、昔話で済んでしまうものであるし、だいたいどれほどの人間が七夕の本当の由来を知っているのかも怪しい。


「日本の七夕祭りは、今話した中国古来の星伝説と、乞巧奠。それに日本古来の神話である棚機女伝説が結びついた行事なのですよ」
「たなばたつめ伝説は古事記で習ったけど、きっこうでん? は知らないなぁ」


きょとんと瞳を瞬かせた彼女の頭をそっと撫でる。
心地良さそうに目を細めた彼女を愛らしいと思うのは、恋人だからというだけではない。
例外もあるかもしれないが、自分の知る限りでは、彼女の周囲に居る誰もがその愛らしい笑顔に癒されているのだ。


「乞巧はたくみを乞うこと、奠は祀るという意味で、七夕にあやかった行事の事です。織女は機織りの仕事を司る星であることから、女性が裁縫・習字に巧みになる事を祈る中国古来の風習ですよ。七夕の夜に供え物をして織女星を祀り、裁縫や習字の上達を祈願する行事の一つですね」
「おぉう!? それはなんと言うべきか…聞いた以上はやらなきゃって感じだよねぇ、苦手だし」
「わたしはどちらでも」


乾いた笑いを零す彼女の背をぽんと叩く。
裁縫や習字が苦手でも特に問題はないように思うが、彼女自身が上達を願うのならばそうしても良いと思う。
現実はそう甘くもないが、願い事をする、ということが女性にとって神聖なものであることに違いはないだろう。
娯楽との分別が難しいところではあるが。


「織女はこと座のベガ、牽牛はわし座のアルタイルの漢名で、和名では織姫・彦星と言います。此方の方が谷山さんには馴染み深い名でしょう?」
「そうだねぇ。織女とか牽牛とか、初めて聞いたし」


途端に戻った話題に首を傾ぎながらも、彼女が頷く。
英名や和名は耳にすることがあっても、漢名は何かきっかけがなければそうそう覚えるものでもないだろう。
自分自身、中国の生まれでなければ知らなかったはずである。


「実はこの星伝説には天文学的な裏付けもあるのですよ。きっとあなた好みの話しです」


そう言うと、彼女は再び瞳を煌めかせ、先を乞うように見上げてくる。
愛らしいことこの上ないが、未だ雨の降り続く空をちらりと見やり首を振った。
外気に晒された肌は時期的に冷える事はないが、じっとりと湿気が張りついて良い気分でもない。
こうして触れ合うことはここでなくても出来るのだから。


「今日はもう遅い。雨の話も含めて明日にでもしてあげましょう」
「えぇーっ!ひどい、そんなこと言われたら気になるじゃんか!」


ぷくっと頬を膨らませた彼女に、右腕に留めた時計を示す。
時刻はもう一時を回っていて、語り合う時間はとうに過ぎている。
後はベッドで、と言いたいところだが、まだやるべきことも残っているだろう。
それはきっと、彼女が楽しみにしていた筈の大切な作業だ。



「願い事は良いのですか? わたしを待っていてくれたのでしょう?」
「それはそうだけどー。なんかもやもやで気持ち悪いよう」


むっと眉を寄せる彼女と唇を触れ合わせ、子供を抱くような体制で立ち上がる。
ハーフパンツに守られた腿が晒されることはなかったが、恥じらった彼女は悲鳴を上げて首筋にしがみついてきた。
下履きを脱いで肘でテラスの窓を閉めてから、彼女をフローリングにゆっくりと下ろす。
彼女の後を追っていた先程は気がつかなかったが、ふと見ればガラステーブルの上に短冊が綺麗に並べられていた。


「リンさんの願いごとは?」


毛足の長い絨毯の上にぺたりと腰を下ろした彼女が振り返る。
切り替えの早い彼女は早速ペンをとって赤い短冊を一枚引き寄せた。
その隣りに腰を下ろし、テーブルに片肘をついて彼女を見詰める。


「あなたはなんと?」
「あたしが先に訊いたんだから、教えてくれなきゃ教えないー」


ぷいっと視線を逸らせた彼女に苦笑が零れる。
いくつになってもこんな所は変わらないのだなと思った。
何があっても変わらない、そこが彼女の良いところの一つであるのだが。


「そうですね、わたしの願いは」


そこで言葉を切って、ついた肘の掌に頬を乗せる。
自分の願いは何であろう。
思いつくものはどれもありきたりで平凡で、けれどかけがえのないものだ。
その全てを願うのは欲張りな気もするが、叶うのならばそうしたい。
けれどその中でも一番強く願うのは、最期の時まで幸せであること。

思考を巡らせていると、待ちきれないとばかりに彼女が右腕を取って揺すった。
ついた肘をテーブルから離して彼女の頬に自分のそれを擦りつける。
暖かい滑らかな頬は、ぎゅっと押し付けるようにして擦るとふわんとはじき返してくる。
その温もりは、彼女が生きている証し。
自分の傍らに存在しているという証明だ。


「あなたが私よりも生き永らえること」
「リンさんっ!」


声を荒げ瞬時に強張った彼女の肩を回した腕で包み、ゆるりと首を振る。
怒っているのだろう、抗うように身体を捩らせた彼女を強引に引き寄せた。


「…と、言いたいところですが。それでは心配で逝けません」


苦笑と共にそう零せば、怒りをそのままに彼女が小さく唸った。
それほどまでに想われているのかと思うと、声を上げて笑いだしたくなる。
彼女と一緒にいると毎日のように思うのだ、幸せとはこういうものかと。
背中を丸めて彼女の頬に口づける。
耳元に唇を寄せて、奥底に吹き込むように願いを告げる。
叶うことならば、私の願いは……



――永久の眠りにつく時は、あなたと共に。




end




  1. 2010/07/07(水) 00:28:00|
  2. リン×麻衣
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windfall 前編




地下駐車場に停めた車を降り、キーロック式のエレベーターに乗り込む。
早く帰ると言っておきながら、今夜は随分と遅くなってしまった。
連絡の一つも入れられたら良かったのだが、同時に事務所を出た上司が同乗した手前、結局マンションに辿り着くまで連絡出来ず仕舞いである。
もしかしたらもう帰ってしまっているかも知れない。

溜め息を一つ零し、目当ての階に辿り着いたエレベーターから足早に部屋へ向かう。
通路側に窓はないため部屋の様子は伺えない。
深夜ということもあり、カードキーを差し込み静かに扉を開いた。

足元を照らす仄かなオレンジの明かりに頬が緩む。
玄関先には小さな女性らしいサンダル。
廊下の先に見えるリビングの磨りガラスのドアからは、煌々と明かりが漏れていた。

彼女に手間を掛けさせないよう脱いだ革靴を揃えていると、背後でリビングのドアが開く音がする。
振り返れば、ほわんと微笑んだ愛しい彼女。


「おかえりなさい、リンさん」
「ただいま帰りました。遅くなってすみません」
「大丈夫だよ、今やっと終わったところなの」


終わったと言われても心当たりは何もなく、首を傾ぐと裸足の彼女が飛びつくように腰元に抱きついてきた。
それを軽く抱きしめてやり、見上げる額にキスを一つ。
手を引かれて歩き出す。


「今日、何の日か知ってる?」
「日付を跨いだ今日ですか?」
「そそ、七月七日」


にこにこと笑みを浮かべながら問いかける彼女に小さく頷く。
用意していたというのは短冊か何かだろうか?
しかし後ろ手にドアを閉めたリビングには特に何も見当たらない。
七夕ですね、と頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうにはにかんでテラスへと続く窓を指差した。


「笹の葉サラサラ、おっきいの!一緒に見よう?」


繋いだ手がするりと抜けて、彼女はテラスへと姿を消した。
離れた温もりが恋しくて、ジャケットをソファへ放るとすぐさまその後ろを追いかける。
開け放たれた窓からは湿気交じりのぬるりとした風が部屋へ流れ込み、レースのカーテンをひらひらと揺らす。


「じゃーん!」


窓に手を掛けて外を覗き込むと、得意気な彼女がテラスの端を指差した。
視線を向ければ彼女の身長など優に超した笹竹がテーブルの向こうに飾られていて、思わず息を漏らす。


「これは…すごいですね」
「でしょう? ぼーさんにおねだりしちゃった!」
「彼がここまで?」
「ううん。流石に運べないから宅配で。そんで、真砂子と綾子と、頑張って括ったんだけど…結構見れるもんでしょう」


得意気ににんまりと笑う彼女の腰を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
裸足のままテラスに下りた彼女を両腕に抱え上げ、下履きを履いて外に出る。


「七夕飾りが天の川へ流れ着くと、その者の切なる願いは永久になる」
「願いが叶うってこと?」
「そうです。七夕の翌日、短冊を海や川へ流すんですよ」


暫く忘れていた一説を紡ぐと、彼女ことんと首を傾いだ。
笹竹に短冊を飾り願い事を書くことで終わるのが一般の七夕なのだろう。
彼女もそれを思い描いていたに違いない。
地域によっては七夕送りに由来するねぶたや竿燈祭りもあるが、これは少々時期もずれていて、地元の人間ですら知らずに過ごしている者も多い。


「禊と一緒です。雨を清めの水として、短冊が流れ消えていくほどの大雨が降ると良い。これぐらいの雨ではいけませんね」
「でも、雨が降ると織姫と彦星が会えなっちゃうんでしょ?」


テーブルを囲ううちの一つの椅子を引いて腰を下ろした。
抱えた彼女に膝の上を跨がせ、向き合うように抱え直す。
片手で背中を支え、ふっくらとした頬に触れる。
温かく柔らかな手触りに惹かれるように反対の頬に口づけた。


「日本ではそう伝えられているのですか?」
「うーん、あたしが聞いたのはそんなんだったけど」
「では、昔話をしてあげましょう」


そう言うと、彼女は大きな瞳を瞬かせて嬉しそうに頷いた。
好奇心旺盛な彼女は自分の知らない事や物などに大いに興味を示す。
それを危なっかしいと感じる時もしばしばあるが、吸収力の早さや順応力には何度も驚かされた。
さて、自分は彼女の気を引くに値する引き出しを持ち合わせているだろうか。


「それは中国の後漢時代に遡った話しです」


その語り出しに、彼女は真剣な表情で一度頷いた。
真面目に話しを聞く体制である。
なかなかにちょっかいを掛けにくくなり、苦笑が零れた。
両手を彼女の腰に回して、小さな身体が転がらないよう指を組む。


「とある夫婦が暮らしていました。天帝の娘の名は織女(しゅくじょ)、牛飼いの名は牽牛(けんぎゅう)。二人は周囲が羨むほどの仲睦まじい夫婦でした」


しとしとと雨の降る闇の中、微かに彼女の頬が赤く染まる。
憧れを抱く夫婦の在り方なのだろう、嬉しそうにはにかんだ彼女の鼻先にキスをした。
結末は違えど、自分もそうありたいと願っているのだと想いを込めて。


「しかし互いが互いに夢中になり過ぎた為に、そう時を経ず仕事すら手につかなくなってしまったのです。余りの暴落ぶりに二人はとうとう天帝の怒りを買い、天の川を隔てて東と西に引き裂かれてしまいました」


感情が分かりやすい彼女がぐにゃりと顔を歪める。
しかしリンの奥底には、同意できる部分があるのだ。
出来る事ならば一日を、一年を、一生を、彼女と二人きりでいられたら。
何処かに閉じ込め自分だけしか見えないようにしてしまえたら、どんなに幸福だろうと思う。
彼女に触れ、その甘い声音を聴き、豊かな表情を飽きることなく見詰めて。
そうして一生を過ごせるという絶対的な確約を提示されたら、自分はどんな禁忌でも犯すだろう。
それは決して彼女には言えないけれど。





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  1. 2010/07/07(水) 00:26:54|
  2. リン×麻衣
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恋煩い7

side-mai



やっと辿り着いたその場所で、目許を覆われていたハンカチを解く。
促されて目を開けると、視界いっぱいに広がる紫の花畑。


「うわぁ!すっごい綺麗!」


興奮が勝り人前にも関わらず大声を張り上げて注目を浴び、注がれた視線に一瞬全身が強張った。
しかし彼はそんなことを気にした様子もなく、背後から肩を支えてくれていた手を頭へと移しゆっくりと撫でてくれる。
斜め上を見上げると薄く微笑んだ彼にいつからか見下ろされていて、一瞬にして頬に熱が上がった。
羞恥心と高揚感で花壇の方へ駆け出したい気持ちを抑え、ゆっくりと花畑を見回す。


「ラン科の花で、シラン、というそうですよ」
「シラン?」


鸚鵡返しに首を傾ぐと、彼はこくりと頷いた。
ランに限らず草花に色々な種類があることは知っているけれど、初めて聞く名前だ。
リンの手が離れたのを見計らい駆け足で花壇に近付いてしゃがみ込む。
近くでじっくり見ると、少々下向きの小さな花が所狭しと溢れていて自然と笑顔が零れた。
綺麗だとかすごいだとか、そんな普通の賛美の言葉しか出てこない。
そっと顔を近づけてみれば、ふわりと柔らかな芳香が鼻を掠めた。
そんなことをしていると、目を閉じているうちに聞きなれてしまったリンの靴音が背後に近付いてくる。
花言葉は――と、小さく紡ぐ彼に顔を上げた。
立ち上がって振り返るとリンがすぐ目の前に立っていて、すこし驚いた。


「互いに忘れないように」


今日の事を言っているのだろうか。
そんな疑問が頭に浮かんだけれど、そう訊くのも躊躇われた。
いや、訊けなかったというのが正しいのかもしれない。
何故なら、優しく目許を緩めたリンの表情に見惚れてしまったから。
初めて見たそれに、小さく開いた唇から小さく息を吸い込む。
呆然と見上げていると、目線を合わせるように腰を折ったリンの背後でカサリと小さく音が鳴る。
それが何かを確認するような余裕もなく、すぐ目前に迫ったリンの顔から逃れるように少しだけ後ずさった。


「最初は誕生石を贈ろうと思っていたんです。ですが暫く考えて、あまり高価なものは受け取ってもらえないんじゃないかと思って」

苦笑した彼に、何がなんだか分からなかったけれどその通りである事は間違いないので、躊躇いがちに小さく頷く。

――贈る? あたしに?

固まった思考で辿り着いた答えに一気に頬に熱が上がった。
いつとも知れない会話の中でふと口にした誕生日を覚えていてくれた。
だから彼は、今日この日を選んでくれたのだろうか。
嬉しい、恥ずかしい、大きな声で力の限り叫び出してしまいたい。
あたしはこんなふうに幸せでいいの?
思わず泣きそうになってぎゅっと目を閉じる。


「ハイブリッドティーローズの、サンシルクという薔薇です。大まかにで申し訳ないのですが、黄色いバラも誕生花だと聞いたので」


その言葉に瞼を上げれば、黄色い薔薇の花束を抱えたリンが困ったように微笑む。
スッと自然な動作で差し出されたそれを受け取ると、微かに残ったリンの温もりとその花束の重さに涙が零れた。
大輪の薔薇に埋もれるようにしゃくり上げると、長い指先が頬を伝った涙の軌跡を優しく拭ってくれる。
何度も何度も頬に触れるリンの熱にゆっくりと目を閉じた。


「本来なら六月七日の誕生花はアサギリソウなのですが、すごく増えると聞いたので返って迷惑になるかと。花を楽しむものでもないようでしたので」


大きな掌が腰と後頭部に回って、花を押し潰さないようやんわりと引き寄せられる。
薔薇の強い香りに混じって、リンの唇が額に届く。
一度だけ触れて離れていく唇に引き摺られるように目を開けて彼を仰いだ。
息が混じり合う程の距離で見詰められたけれど、深い色の瞳を見れば不思議と羞恥は吹き飛んでしまった。


「誕生日おめでとうございます」
「うん、ありがとう」


涙を堪えて発すれば、それはそれはすごい鼻声だった。
一瞬面喰い、顔を見合わせて笑い合う。
髪を梳くように撫でるリンの掌に頭を乗せて首を反らせ、珍しく声を上げて笑う彼に微笑みかける。
あの日、彼と会えて本当に良かった。
会う機会なんていくらでもあったのだけれど、あの日だったから良かった。
きっとこの先も一緒にいられるのだろうと思ったら、幸せすぎてどうにかなってしまいそうなほど嬉しい。
ゆっくりと近づいてくる彼の顔に再び目を閉じる。

唇に触れる柔らかでしっとりと濡れた温もり。
安心できて、色気すら感じるほどの男の香り。
骨張った力強い大きな手に、迷いなく自分を導く長い脚。
すっぽりと包みこんでくれる見上げるほどの体躯。
流れるような指先によく馴染む細い髪。
今は自分だけを見てくれる漆黒の瞳。

全てが自分のものだなどとおこがましいことは思わない。
けれど、自分の全てを彼に捧げても良いと心から思っているから。
だからきっと彼の全ても自分のものなのだ。

ふと目を開けた瞬間彼の瞳には自分がめいっぱいに映っていて、自分の瞳もそうであれるようにじっと見つめ返した。
啄ばむように数回触れた唇と共に、彼の温もり全てが離れて行く。
それが寂しくて、花束を片手に抱え直すと彼の手に指を絡ませる。


「もう目隠し、しなくても良いんだよね?」


握り返してくれた手が嬉しくて、悪戯に瞳を眇めてそう問う。
彼は小さく笑って頷いて、そうしてゆっくりと歩き出した。
さっきまでは見えなかった周囲の景色が、今の自分の全てだ。
目に映る全てがいつも以上に美しくて、儚くて。
これからどんなに時が経っても、自分の生涯が永劫だとしても、この日は一生忘れないでいられるに違いない。


――互いに忘れないように。


耳に蘇った声音に、彼もそうであったら良いと思った。
絶対忘れない、どんなことがあっても、絶対に。


「薔薇はギリシャ時代に、愛・喜・美・純潔を象徴する花とされたそうですよ。それが起源となって、花嫁が結婚式に薔薇を持つ風習となったようです」
「そうなんだ?」


ふと立ち止まった彼を見上げればその顔は興味の引くおもちゃでも見付けた子供のように楽しそうに笑っていて、思わず頬が引き攣った。
こんな表情の時の彼は危険だ。
今までの経験から頭の中に大きく響き渡る警鐘に仰け反って距離を取ろうとする。
けれど繋いだ手に引き寄せられて彼の胸元に思い切りぶち当たってしまった。
うぐぅ、と情けない声で呻くと、腰を屈めた彼の声音が耳元で囁く。


「その時は、もっと大きなバラにしましょう?」





麻衣はどくんと跳ね上がった心臓に、やっぱり煩い、と真っ赤に染まった顔を顰めた。





end




  1. 2010/07/07(水) 00:00:00|
  2. リン×麻衣
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[お知らせ]恋煩い完結とwindfallについて。

最終話、完成いたしましたー。
終わった!やっと終わりました!!

終わってみるとなんだか少し書き足りないような気もしますが。
思うままに続けていると来月にまで足を伸ばしてしまいそうなので、結構頑張って削ってみました。
これで恋煩いに至るまでの小話をちょこちょこ書き始める事が出来そうです。

拍手お礼もさっきやっと表示させることが出来て一安心。
まだトップページの拍手にしか対応しておりませんが、頑張って全拍手に対応させられるようにしてみますね><

受難もそろそろ新作に置き換えたいところです。
最近ナル×麻衣に飢えてきているので、執筆の方は意外とさっくり終わらせられそうですー。
妊娠も出産も一応経験しているので、かなり楽しんで書けますし。
日常生活のネタ的にも困らない程度には面白い事が沢山あったので、面白おかしく皆さんにも楽しんでいただけたらなって思います^^



しかーし!その前に七夕イベント!
日付をまたげば7月7日、七夕でございます。
此方は以前から少しずつ書き進めていたので、なんと当日アップが叶うのですヾ(*´∀`*)ノキャッキャ

windfall
直訳すると「たなぼた」でございます。

たなばたにたなぼた。

我ながら安直過ぎるタイトルセンスに恥ずかしすぎて血を吐きそうです。


ナル×麻衣でも良いかなーとも思ったのですけど、七夕飾りの短冊が陰陽五行説に基づいてるのでリン×麻衣に。
ちょっと説明っていうか、捕捉でうざったくなっちゃいました。
最後まで諦めずに読んでくださる方は、何が何だか分かりにくくて大変だと思います、すみません。
でも中国古来の星伝説だったので話しが進めやすいったらなかった。

ナル×麻衣派の皆さまごめんなさい(。・人・`。))



では恋煩い最終話とwindfall、日付変更時にアップしますので、お楽しみいただけたら幸いです。





  1. 2010/07/06(火) 22:41:48|
  2. 更新のお知らせ
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恋煩い6

side-lin



彼女の唇は微かに触れただけですぐに離れていったけれど、それは今までのどの口付けよりも甘く愛しいものだった。
涙に濡らせた頬を染める彼女が、恥ずかしそうにはにかむ。
こうして彼女から触れられたことは以前に一度だけあったが、その時はすぐに逃げられてしまった。

臆することなく彼女に触れられるというだけではなく、自分が望めば彼女からも与えられるという立場を得られたのは、言葉では言い表せられないほどにとても幸福なことだ。


「あたしも、リンさんが好き」


彼女の声音が耳の奥に甘く響く。
涙で微かに強張った彼女の滑らかな頬に触れて、怖がらせないように再び顔を近づけていく。
もう少しだけ、と小さく囁くと、彼女はぱっちりと大きな瞳を見開いて、そうしてそっと瞳を閉じた。

瞼に指先で触れて、ふっくらとした彼女の唇に己のそれを重ね合わせる。何度も角度を変えて彼女に触れた。
噛みつくように、掠めるように、擦りつけるように、彼女の唇の形を確かめるように、何度も何度も。


「っふ、くるし」


ずっと息を詰めていたのか、唐突に顔を背けた彼女が肩を揺らして咳き込んだ。


「こういう時は、ここで息をするんですよ」


涙目で荒い呼吸を繰り返す彼女の背中をゆるゆると摩りながら鼻の頭をそっとつつくと、彼女は小さく唸って首を振った。


「だって、少しだけって、言ったのに」


むぅ、と頬を膨らませた彼女に見上げられ、首を傾いだ。


「少しでしょう?まだ途」
「も、無理っ!」


言いきる前にぶんぶんと首を振って、顔を真っ赤にした彼女が本当にやんわりと胸元を押し返してくる。
これしきの抵抗でどうなるものでもないのだけれど、思い切り拒絶しないだけ相応に彼女も自分を好きでいてくれるのだということが伝わり自然と笑みが浮かぶ。

正直まだ触れていたいし、触れるだけの口づけでは足りないぐらいだ。
強引に迫れば許してくれるのだろう、けれど、今はこれで我慢するとしよう。
こんなに可愛らしい恋人が手に入ったのだから。







「そんで、これはどういうことかなぁ」


不満げな彼女の声音に思わず苦笑を洩らすと、彼女の手を引いて歩き出す。
せっかく拭った脚が汚れるからと、思惑通りに暴れる彼女を抱き上げて駐車場まで戻ってきた。
やっと解放されたと思ったらこれだ、なんて不貞腐れている彼女を多少強引に植物園へと連れ出す。
ゲートを潜って園内をゆったりとした足取りで歩いていると、時折すれ違う人が麻衣の姿を見て不思議そうに首を傾いだり、小さく笑ったり、人懐こそうな夫人なんかは「あらあら、頑張って」などとリンに手を振ったりもした。


「全っ然見えないんですけど」


恐々と歩くその足もとに気をつけてやりながら、目許を覆ったハンカチをぐいぐいと引っ張る彼女の手元を窘めた。


「もう少しですから、我慢してください」


せっかく植物園にまで来てこれもどうかと自分ですら思うが、それでも彼女に喜んでもらえたらという想いからなのだし、ちょっとくらい目隠しをして歩かせたからといってどうなるものでもないだろう。
園内は目的の場所に着いてから帰りがてらにでも充分見て回れる広さだし、そう問題もない。
ただ少し、好奇心旺盛な人だかりがまばらに後ろを着いてきているだけで。


「良い匂いだね。この間買ってきた紅茶の匂いと似てるー」


視界が暗転している分、呑気にすんすんと鼻を鳴らせる彼女の鼻を悪戯に軽くつまんでやると、驚いた彼女は盛大に悲鳴を上げてつんのめった。
前方へ傾いた彼女の身体を咄嗟に受け止める。


「もうっ!びっくりしたぁ」
「すみません」


名残り惜しいが柔らかな身体をそっと離して真っ直ぐに立たせてやり、再び歩き出す。
あからさまにむっとした表情だった彼女も、ぎゅっと手を握れば照れたようにはにかんだ。

話しかけれるとふっくらとした頬にえくぼが浮かぶ。
聞こえる物音に整った眉を上げて窺うように首を傾ぐ。
強い香りの花壇の前では小さな唇を震わせて感嘆の声を上げる。
段差では不安そうに腕にしがみ付いて困ったように表情を曇らせる。

彼女が見詰めていることに気付かないのを良い事に、その多彩な表情や仕草を堪能しながらゆっくりと歩いた。

こんなふうに長い時間彼女を拘束したのは初めてで、自然と目許も緩む。
願わくば、この先ずっと彼女が傍らで笑っていてくれたら良い。



途中、園内で造花やリーフなどを販売しているテナントへ寄り、店頭で彼女に動かないよう指示すると注文していた花束を受け取る。
思ったより大きいそれを抱え彼女を振り返ると、店主である老人に無言でメッセージカードを差し出された。
暫し考え短く『happy birth day』とだけ書き添えると、店主に軽く会釈をしてラップと薄いピンクの包み紙の間にそれを挟む。


「お待たせしました」


急に触れて驚かせないよう静かな声音でそう声を掛けると、ぽつぽつとテナントの周囲に散っていた人間が感嘆の声を上げる。
訝しげに眉を顰めたが花束のせいかとすぐに思い至り、彼女に聞こえないように溜め息を吐いた。

遠巻きに見ている数人はこの先の行方が気になって仕方がないようだ。
どこかへ行って欲しいのはやまやまだが、彼女が居る手前、声に出してそう言う訳にもいかない。
小さく息を吐くと、野次馬に向かい唇に人差し指を当てて黙っているようジェスチャーする。


「行きましょう」


花束を背中に隠すようにして、不安そうに立っている彼女の肩に手を回す。
促されるがままに歩き出したその肩をぎゅっと引き寄せると、羞恥で小さな身体を強張らせた初心な彼女が小さく悲鳴を上げた。






  1. 2010/07/06(火) 07:56:20|
  2. リン×麻衣
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[お知らせ]恋煩いについて

更新いたしました。
今回は睡魔と戦いつつ砂吐きそうになりながら書き上げました。
頭の中はまっぴんくです。
リンさんらしくない言動は目をつぶってくださいましー。

夜通し作業の後に早朝更新は初めてなので、もうドッキドキです。
ツレが起きて来ないか、果たして朝食の片付けは間に合うのか、シャワーは浴びて行けるのか。
…ってゆーか出勤時間までに間に合うのアタシ!!!?
という感じで。



さて、完結までもう一歩!
勢いで半分くらいまでは書き上がっているのですが、なかなか良い資料が見つからずにちょっと苦戦しております。
仕事の合間にちょっと失礼してネットでぐぐったりしているのですが、気に入る材料がなくって。

お花屋さんなんかも覗いてみたり、冷やかしよろしくお話を聞かせていただいたりしているのですが、なんせ実物が見つからない!
写真だけじゃ香りとか手触りなんかが分からないので納得出来ません><

ですが昨夜、親切な愛らしい店員さんが実物を仕入れている店舗を紹介してくださったので、今日の休憩時間に見学に行ってみようかと。
あわよくば一輪ぐらい欲しいなぁなんてヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
売り切れてたりしたら本気で泣きそうですが←



では恋煩い第六話、なんだか呆れられそうな展開ですが…是非最後まで読んでくださいませー。






  1. 2010/07/06(火) 07:51:25|
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やっと終わりましたー。

深夜から始め怒涛の引っ越しがやっと…やっと!!
secret heartから夜逃げの如くまるっと引っ越してきたわけですが。

カテゴリ最高!


またもや安直に
secret heart plus
などと命名したわけですが、如何でしょうか。
少しは見やすくなりましたか?><


個人的には記事投稿がすごく簡単で素敵だなって。
あとあと、一覧が出ると作品数は少ないもののちょっと感動します(笑)

まだ色々弄っていないので、時間が空いたらごそごそ作業始めますね。
取り敢えず今は、寝…たらやばいので、寝落ちしないように執筆進めますー。

もうちょっとで恋煩いが一話分がりそうな感じなので、ぶっつぶれてなければもしかしたら出勤前にお披露目出来るかもヾ(*´∀`*)ノキャッキャ



ではでは、頑張ってまいります(キリッ






  1. 2010/07/06(火) 05:55:02|
  2. 徒然日記
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恋煩い5

side-mai



きちんと残さず食べてくれるのだろうなとは思っていたけれど、彼は驚くほど綺麗に中身をたいらげてくれたので麻衣は満面の笑みを零した。
バスケットを片付けて、お腹いっぱーい、と羽織ったカーディガンを脱ぎ捨てげんなり肩を落とした麻衣に、リンが珍しく小さく笑い声を上げ手招きする。
太い木の幹に背中を預け長い脚を交差させた彼の元へ四つん這いで近付くと、軽く脚を広げた彼にひょいと持ち上げられて、片腿の上に座らされた。
重いから、と慌てて身を引こうとしたけれど長い腕にぎゅっと羽交い絞めにされ、暖かい体温と鼻を擽る彼の香りに大人しくそこへ収まる。


「久しぶり、ですね」
「ん、そだね」


背中を抱えた腕を伸ばして頭を撫でられ、小さく頷く。
長い時間こうして二人でいるのも、抱きしめられたのも、再会したあの日以前のこととなると、本当に久しぶりだった。
彼は麻衣の腰をしっかりと捕まえていた掌を、脇腹から肩、二の腕、手首へと擽るように滑らせて、最後に辿り着いた麻衣の指先を絡め取る。
リンの大きな掌と長い指が自分の指先をすっぽりと絡め取るのに口元が綻んだ。


「変化した環境の中で、あなたは新しい友人に恵まれ、きっと全く変わった新しい生活を楽しんでいるのだと思っていました。私の手はもう必要ないのだと」


リンが言葉を紡ぐたびに額に押しつけられた彼の顎が動くので、軽く身体を捩って彼の首筋にすり寄った。
こめかみに彼のゆったりとした脈動が伝わってきて、満腹の麻衣を眠りに誘う。

彼を必要ないなどと思ったことはないのに、どうしてこんなふうになってしまったのだろう。
彼に寄せていた想いが恋だというのは分かっていたのに、恐ろしいほどそれに侵食され患っていたのだということは彼に再会したあの日まで全く気がつかなかった。

勘違いしてしまいそうなほどに構ってきたリンも、同じであったら良いのに。
そう願いを込めて、指先に絡んだリンの長い指を左手で絡め取り、彼の心臓の上に右手をそっと乗せた。


「私が浅はかでした」
「否定はしないけど」


つむじの辺りに頬を寄せられ、大袈裟な言葉と真摯な彼の声音に麻衣は肩を震わせてくすくすと笑う。


「友達も沢山出来たし、専攻の先生もすごくいい人なんだ。大学、楽しいと思う」


事務所やイレギュラーのみんなの手を借りて無事に入学した大学には、同じ高校からの生徒も多数在籍しているし、言葉に偽りもなく新しい友達だって増えた。
以前のようにどっぷりバイトに浸かる日々でもなくきちんと付き合いもあったので、人懐こく愛想の良い麻衣が周囲の人間と友好な関係を築くのは容易いことであった。
専攻した心理学の講義もとても興味深い内容のものばかりだし、その担当教授も優しく聡明で生徒からの支持も非常に高い素敵な人だ。
大学生活において不満など微塵もないし、もしあるとしてもそれは自分の身勝手だと分かっている。


「でもなんか違うの。リンさんのせいだよ」


何が変わったのかと考えれば、それはすぐに明確な意思を持って自分の中に浮かび上がる。
ずっと支えてくれていたリンが傍にいないからだ。
あの時の彼は自意識過剰ではないと言いきれるほどに麻衣に対して優しく甘く、それは麻衣が淡い希望を持って彼に接するのを大いに手助けし、そうして新しく始まった生活にどんよりと暗い影を落とした。


「すみません」
「それってどういうすみませんなの?」


噛み締めるように低い声音で謝罪の言葉を漏らす彼に、思わず声が強張った。
頭を撫でてくれていた彼の手の動きがぴたりと止まり、なんだか無機物が頭の上にただ乗せられているようなおかしな感覚になる。
落ちた沈黙に喉元を畏怖がせり上がってきた。
ああ、自分は本当に恋をしているんだ、と思った。
心臓がいつにない速さでどくどくと鼓動を繰り返す。
恋に患ったそこは酷く煩い。
彼の胸元に置いた手をぎゅっと握りしめる。早く時間が過ぎれば良い。


「気付いてあげられなくて。それと、あなたを一人にさせたことも」
「リンさんがいないと駄目にしたのはリンさんなんだから、ちゃんと責任とってくんないとやだよ」


苦笑と共に落ちてきた言葉に、間髪いれずにそう返す。
勢いよく見上げた彼の表情はとても優しくて、じわりと視界が歪んでいく。
声を上げて泣きそうになるのを息を詰めて堪えると、瞳に溜まった涙がぼろぼろと零れていった。
彼の表情は滲んだ視界では見えなかったし、輪郭すらも危ういそれを見ている事も出来なくて俯いた。


「そのつもりです」


暫しの沈黙の後、優しい声音と共に額に落とされた口付けにしゃくり上げる。
次から次へと溢れてくる涙は彼のシャツにじんわりと滲み、それぞれが形の違う濃いグレーの染みをいくつもいくつも作っていく。


「距離を置いたのはあなたの為だ。日に日に大きくなるあなたへの気持ちが、まだ先の長いあなたの枷になると思ったからです。でも、あの日あなたに会って、それは間違っていたのだと知った。あんなふうに泣かせると分かっていたら」


背中を支えていてくれた腕にぎゅっと抱きしめられ、彼との距離がこれ以上ないくらいに狭まる。
彼の胸元に額を擦りつけるような体制になると、絞り出すような熱い吐息が耳元を過ぎて身体が跳ねた。


「今からでも間に合いますか」


その言葉と共に絡めていた指先が解かれ自由になる。
彼の左手が濡れた頬をゆっくりと数回撫でて、拘束が緩んだと思ったら顎を持ち上げられた。


「あなたのことが好きです。ずっと前から」


未だ流れ続ける涙を掬うように彼の唇が目許に触れる。
何度も何度も啄ばむように繰り返されるそれにぎゅっと目を閉じると、目尻から目頭へ、鼻の頭へ、頬、そうして唇のすぐ横へと、彼の熱い唇が慈しむように移動してゆく。


「一緒にいたい」


駄目ですか、と少し困ったような表情の彼にすぐ間近で視線を絡め取られる。
そっと前髪を掻き上げられて、額と額がこつんと音を立てて触れ合った。


「いじわるだ」


彼の背中に縋りつくように腕を回して、小さく笑った。
駄目だなんて思ったりしない。
返事だってきっと分かっているはずなのだ。


「あなたの恋人にしてください」


麻衣はその言葉に目許を綻ばせると、ゆっくりとリンの唇へキスを落とした。





  1. 2010/07/06(火) 04:12:24|
  2. リン×麻衣
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[お知らせ]恋煩いについて

やっとの思いで更新いたしました!
残すところ、あと二話…で、収まると良いなぁ。
しょっぱなから誕生日完結とか言いきっておいて、閲覧してくださる皆さまには本当に申し訳ない限りです。
お詫びの言葉もありません、ごめんなさい><

一応完結までの構想はあるのですが、果たしてキャラがその通りに動いてくれるかどうか怪しいものです。
今回のお話は崩壊したリンさんと麻衣ちゃんをお楽しみください(笑)



次の更新は早ければ明日・明後日を予定しております。
なんせ仕事でバッタバタで、休みですら息子もペットも構ってやれない始末であります。
息子と出掛けたのが先々週の土曜日とか…もう泣きたい。゚(゚´Д`゚)゚。

最近は睡眠もまともに取れないので少しだけ薬にお世話になっていますが、運転が心もとなくてすごく怖いですー。
せめて家に持ち帰る仕事を少しでも減らせたら良いのですけど。
今週いっぱい頑張れば来週から地元勤務に戻れるので、それまで頑張ります。
渋谷の支社に居れるのは幸せですが土地柄妄想が溢れ返ってしまうので、やっぱり地元が一番だと思う今日この頃(笑)


では恋煩い第五話、お楽しみいただけたら幸いです。




  1. 2010/07/06(火) 04:11:06|
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