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secret heart plus

さきっぽのGH二次創作ブログへようこそ。

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きみはペット(後半)





強制させられているという意識が強すぎたのだろうか。
一晩明ければ、昨日は全く気付かなかった事が山ほどあった。


「良い匂いでしょ?」


ナルの衣服を干す時だけ変化する麻衣のなんとも言えない嬉しそうな表情。
丁寧に皺を取り除きながら次々とハンガーに掛けてゆく。
その手際の良さは普段の彼女からは想像がつかないどころか、目の前にしても似合わないと思わせるほどだ。


「ナルのまくらー」


枕カバーを替える時には、一度それに頬を寄せてぎゅっと抱き締めていた。
彼女はひとつ大きく息を吸い込んで、ふわんと柔らかく微笑む。
それに倣って麻衣の枕を腕に抱いてみると、シャンプーの香りが鼻を掠める。
同じものを使っているというのに、まるで違うその香り。


「えーっ!昨日もやったのに、これもやるの?」


清潔に保たれたほとんど白に近い雑巾で床を拭く時は、文句を言っていたくせに、懸命になり過ぎて額に汗を滲ませていた。
そんな彼女を横目に見て、まるで子供のようだと思う。
微笑ましい光景にぐっと頬を引き締めたら、すっごい仏頂面、とか、そんなような事を言いながら麻衣がフローリングを転げ回った。
それには何がそんなに楽しいのかと首を傾げるばかりだった。


「お昼の欄はここ」


食事は菜食主義者であるナルがバランス良く栄養を取れるよう、一週間分の献立が作ってある。
おおざっぱな麻衣の性格からは考えられないほど癖のない綺麗な字。
そう言われなければ麻衣が書いたものだと気がつかないだろうなと思って、知らずに顔をしかめた。


「そこは一昨日の夜からバッチリだもんね」


ふと思い立って覗いた靴箱には、ナルが毎日履く革靴が綺麗に磨き上げられ、麻衣の小さな靴に寄り添うように置かれていた。
家を出る時にはフロアに出されているのだろう、いつものように。

得意気な彼女の頭を軽く小突く。
いつもこんなふうに過ごしているのだろうか。
ナルに関わるもの全てが嬉しい、愛しい、まるで宝物を扱うよう。
ころころと変わる表情はその殆どが幸せに満ち溢れていて、正直見るに耐えない。
呆れるほどに楽しそうだった。





「はいナル、あーん」


箸で掴み上げたアスパラを上機嫌で口元に運ぶ麻衣に、ナルは眉間に皺を寄せると心底嫌そうな顔をした。


「それは無理だ」
「ダメ!昨日は出来なかったんだから」


考えるまでもなく首を振って却下するが、麻衣も負けじと強い意志を持った視線を寄越す。
全く引く様子のない彼女に深い溜め息が漏れた。


「ほら」


今にも唇をこじ開けられそうな雰囲気に麻衣の持つ箸を下げさせて、同じように返してやる。
彼女は一瞬目を見開くと、恥ずかしそうにはにかんで小さく口を開けた。


「んん…あれ? おいしい」


何事かを考えるような素振りでもごもごと口を動かしていた麻衣が、首を傾いでそう言った。
そうかと小さく返すと、これも、と彼女は小鉢を指差した。


「もっと口を開けろ」
「もっとって…あたしこれでも一応女の子なんだけど」


小鉢の中に綺麗に盛られた蓮のきんぴらを一掴み、口元で軽く揺らす。


「うるさい、無理矢理ねじ込まれるのが趣味なのか?」


長い付き合いで分かった麻衣の苦手な表情を浮かべると、彼女は軽く仰け反り頬をひくつかせた。


「うわぁ…なんかげひ、んんっ!?」
「黙れ。食事の最中くらい静かにしていられないのか?」


何事かを言いかけた麻衣の口に待機していたきんぴらを詰め込んでやる。
文句の一つでも返ってくるかと思ったが、彼女は意外にも大人しくそれを咀嚼した。


「開けろって言ったのはナ、っうぐ!」
「減らず口を叩くな。僕はお喋りな口を開けろとは一言も言ってない」


麻衣の細い喉が咀嚼したものを嚥下していくたびに、箸の先で唇をつつくようにしながら次々と食べ物を含ませてゆく。


「無理矢理入れないでよ!もうちょっとゆっく、んん!?」


いい加減怒り出しそうな雰囲気に、瞳を眇めて目元を緩めた。


「美味いか?」


そう問うと、麻衣は少しだけ頬を染めて頷く。
自分で食べるよりも?
そう訊きたかったがやめておいた。

そんなやりとりをしているうちに、麻衣はとうとう箸をテーブルに置く。
小さな口に次々と料理を運びながら、その合間にナルもゆっくりと食事を取った。
嬉しそうに身体を揺らす彼女を、ふと、まるでペットのようだと思う。
子供ではなく、これはペット。
そう考えると不思議と彼女の喜ぶように行動出来たし、自分も大いに楽しめた。

麻衣はペット。

人が自分を奮い立たせるため、鼓舞するために心の中で呟く言担ぎのようだ。
それはまるで呪文のようにナルの中に浸透して、自然と目元も緩む。
麻衣が愛情や歓喜を体中から溢れさせ、尻尾を振っている犬のようにさえ見えた。



夕食を平らげ一緒に手分けして後片付けを済ませる。
湯を張る間は何を話すでもなく毛足の長い絨毯の上に並んで座り、彼女の淹れた紅茶を飲んだ。
その後は犬の如く嫌がる彼女を引き摺って風呂に入り、頭の天辺から爪先まで余す所なく綺麗に洗う。
風呂から上がると機嫌を窺う為に昼間買っておいたアイスを与え、それを上機嫌で食べ始めた彼女を脚の間に座らせると、濡れた髪を乾かしてやった。

始終声を上げて笑う麻衣を眺めながら、やはり子供ではなくペットなのだと思った。
勿論、どちらかと言えば、の話しだけれど。


「ナル?」


散々世話を焼いたあと、久しぶりに同時にベッドへ身を沈めた。
腕の中で身動ぎした彼女を、枕に顔の半面を埋めながら見下ろす。


「疲れたでしょ?」


そう問う麻衣に軽く首を傾いだ。
そう言われれば、朝から夕方まで動いていたというのに驚くほど疲れを感じないし、少しの倦怠感もない。
心配そうな表情の麻衣をからかって遊びたいという欲求に駆られたが、麻衣の指先が何度も頬に触れたことが心地よくてやめた。


「……いや」
「そっか。ありがと」
「ああ」


たまにはこんなふうに甘やかしてやるのも良い。
しかし…


「いつまでもこうとはいかないか」
「ん?なに?」


躾に関わる、と聞こえないように小さく呟くと、麻衣は訝しげな表情で見上げてくる。
彼女の頭を抱き込むようにして誤魔化してから、その温もりにぴったりと身体を寄せた。


「麻衣、子供」
「は?なに?」
「子供」


短くそう言うと、暫しの沈黙の後、腕の中の身体が控えめに暴れだす。


「なによそれ、あたしが子供ってこと?」
「馬鹿、違う」


ひとつ苦笑を零し、大人しくなった麻衣の背を撫でる。
その耳元に英語のスペルを注ぎ込むと、難しそうに唸った麻衣が顔を上げた。


「めいくらぶ、とぅ?」
「そう」
「どーゆーいみ?」


きょとんと見上げてくる麻衣に口づける。
夫と妻としての関係を築いてからもう二年。
二人の生活にお互いが慣れるまでと、緩やかな時間を過ごしていた。
だが毎日がこんなふうでも悪くはない。
特殊な能力のある者同士の子供になるのだ、能力的にも立場的にもその将来を案じない訳ではないけれど。
それでも麻衣とならばどうにかなるような気がした。


「Try to have a baby」


――please darling.

囁くように耳の奥へと吹き込まれ、麻衣は頬を真っ赤にしてナルの胸元に爪を立てる。
そうして麻衣は、滅多にない夫の甘い誘いに小さく頷いたのだった。





end





――――――――――――――――――――――




更に誰さこれ、って感じになっちゃいました(A;´・ω・)
前半最悪だったからギャグで終わらせようと思ったのにどうしてですか!?

手直ししようと思ったけどどうにかなりそうな感じじゃなかったので投入!
うちの博士は頭のネジも緩んでれば他の部分も緩んでるようです。
なんたること!!!




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  1. 2010/08/30(月) 14:24:34|
  2. ナル×麻衣
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

きみはペット(前編)




忘れていた…という訳ではない。
ただ、そういったことを重要な物事として捉えきれないだけである。
それは誰もが分かっているはずだった。

しかし、分かっていることと寛容出来る事、それが常にイコールで結び付くかといえばそうではないわけで。
彼がその日を普段と変わりなく過ごしたとして、果たして誰が彼を責められようものか?
そう問うのなら、誰もが彼女の名を挙げるだろう。


――今日一日、あたしの言うことに逆らわないこと。


激怒した彼女が突き付けた仲直りの条件は、彼が軽く眩暈を起こすほどに難解なものであった。

そう、彼にとっては。





きみはペット





「ナル。洗濯機止まったよ」

「ナル!それお風呂用のマジックリン」

「ナル、特売日だったの!早く行かなきゃなくなっちゃう!!」

「なーるー!寝ちゃダメだってば。シーツ替えたら布団取り込むんだから」

「ナル? あたしはあんたと違ってきちんと三食食べるの」

「ナル、ちゃんと拭かないとカビちゃうって。そこは乾拭き」

――ねぇ、ナル。

ナル。




「ナルってば!」


耳元でそう叫んだ麻衣の声に、思考の旅から現実へと引き戻された。
緩く首を振って耳の奥にわだかまる彼女の声音を追い出す。


「まるで僕の大安売りだ」


先ほど麻衣に引き摺られて買い出しに出掛けた。
そこで叩き売りされていた商品が販売員によってやたらと連呼されていたことを思い出し、不快感に顔をしかめる。


「ねぇナル。ちゃんと聞いてた?」


あからさまにむっとした表情の麻衣にそう問われ、深く息を吐く。

まだ読みかけの調査資料は今朝方一枚残らず彼女に取り上げられてしまった。
休日中に家で仕上げようと持ち帰った論文のバックアップも既に安原の手に渡っていると言う。
書斎には鍵が掛かっていて、中から本を持ち出すどころか休息に入ることすら叶わない。
その鍵ですら、家の中にはないのだとか。


――限界だ。


まだ湯気を立てている出来上がったばかりの夕飯を前に、椅子から立ち上がると斜向かいに座っている麻衣を見下ろした。


「もういい加減にしてくれ。僕は家政婦じゃない」


硬い声音でそう言うと、麻衣は大きな瞳を不思議そうに瞬かせる。
普段ならば気取られない程度に目元も緩むであろう。
そんな彼女の仕草にでさえ苛立ちを覚えるほど、ストレスはピークに達していた。


「なに言ってるの?」


心底分からないといった麻衣の表情に、握った拳に力を込めた。
何を言ってるも何も、そのままだろう。
鳥頭だけじゃなくとうとう耳まで悪くなったか?
そう口を突いて出そうになった言葉を、沈黙と共に飲み込む。


――自業自得でしょ?


麻衣の勝ち誇ったような声音が耳に蘇る。
それをかき消すように目を閉じると、彼女の暖かい指先が腕に触れた。


「ナルってば、鈍感すぎ」


困ったようなその声で麻衣が苦笑したのが分かった。
瞼を上げると、小さく首を傾けて悲しそうに笑う彼女と目が合う。


「そんな言い方されたら…ナルがまるであたしのこと、いつも家政婦だって思ってるみたいじゃない?」


そんなつもりで言ったんじゃない。
否定しようと口を開くが、麻衣が緩く首を振る。
分かってるからヘーキ、と、笑った彼女が普段よりも少し小さく見えた。


「あたし、ナルのこと家政婦だなんて思ってないし、そんなふうに扱ったりしてないよ?」


無理をして笑っている。
一目見ればそう分かるような儚い麻衣の微笑みに、まだ温もりが残る椅子ではなく、彼女の腕を強引に引き上げてリビングのソファへと腰を落とした。


「あたし、ナルと一緒に居たかっただけ」


その言葉に表情は動かさずとも小さく息を呑んだ。
冷静になって思い返せば、確かにそうなのかもしれない。
買い物も、掃除も、洗濯も、食事の支度も、全部二人でやったのだから。
麻衣がナルだけにやらせたことなど何一つとしてなかった。


「麻衣」


居心地悪そうに立ったままの彼女の身体を引き寄せる。
ソファに深く座り直すと膝の上に跨らせ、腕の中に閉じ込めた。


「悪かった」


肩口に顔を埋めるようにしてそう言うと、麻衣は驚きに目を見開く。
そうして小さく苦笑を零し、微動だにしないナルの髪をゆっくりと梳く。


「変なナル。ナルがオンナゴコロ、分からないのなんて、今に始まったことじゃないじゃん」


充分楽しかったからいーよ。
悪戯っぽく茶化してそう言う彼女に、思い切り顔をしかめた。


「僕は違う」
「うん、ごめんね」


ぼそりと呟くと麻衣は泣きそうに顔を歪めた。
でも麻衣は絶対に泣かないし、そんな表情をナルに見せることもない。
けれどナルは、不器用な麻衣が気取られないように時折そんな表情を隠していることを知っていた。
そしてまた麻衣も、不器用なナルが麻衣のそんな変化に気がついて心苦しく息を詰めるのを知っている。
ただ、口に出さないだけで。


「やり直すぞ」
「へ?何を?」


思い切ったように顔を上げると、琥珀色の瞳をきょとんと瞬かせた彼女が首を傾ぐ。


「全部」


短くそう言えば彼女は暫し思考の波を漂い、そしてぷっと小さく吹き出した。


「いやいや。ナルが完璧主義者だってのは嫌ってほど分かってるけどさ、誰もそこまで」
「麻衣」


目に涙を溜めるほどに笑いを堪えながら話す彼女の言葉をせき止める。
背中を丸めることで、膝に乗せてもなお少し下にある麻衣の目線に視線を合わせた。


「結婚記念日だろう。二人で祝うものだと僕に言ったのは誰だ?」


琥珀色の瞳を真っ直ぐに見詰めてそう言うと、麻衣は堪えていたはずの涙をぽろぽろと零して頷いた。





――――――――――――――――――――――




誰さこれ、って感じになっちゃいましたwww
うちのナルはただでさえナルであるのか怪しいのにまた更に遠い存在に…
といってもどういうナルなら本物なのかって言われても分からないし、私の中では主上のナルしかナルじゃないわけです。
どんな博士に出会っても残念ながらそれは全部偽物なのですね。


ただ限りなくそれに近づけることは可能なのだと思いますから、これからも頑張ります!
でも今回は書きたくて書きたくて…勢いで書いたものなので見逃してくださいませ><


後編へつづくのか!?
  1. 2010/08/01(日) 19:27:27|
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