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恋煩い3

side-mai



薄いピンクのキャミソールワンピースと白のカーディガン、小さな造花の飾りがついたヒールの低いミュールを選んでもらったら、これが何を悩んでいたのかと思うほど愛らしく決まって、麻衣はご機嫌だった。
ずっしりと重たくなったショルダーバッグを肩に掛けると中身を訊かれ、中身を並べてテーブルに出すと、化粧ポーチの中から薄いパールピンクのリップ・薄手のハンカチを麻衣のカーディガンのポケットへ、小型のデジタルカメラを彼の胸ポケットへそれぞれ押しこむと、行きましょうと言われて笑ってしまった。
電源を落としてテーブルの上に置かれた携帯を気にしながら、もし迷子になったらどうするの? と訊いたら、こうしていればなりません、と玄関から手を引かれて車に乗り込んだ。

まさか作業用のバンで来るとは思っていなかったけれど、彼の運転する車が作業用のバンでないことに目を瞬かせてしまう。
車の事は詳しくないから車種などは分からないけれど、一人用にしては随分大きな車だったので何故か尋ねたら、ナルが地方へ行く時に使っていたのだと言われ納得した。


「顔を出してはいけません、危ないでしょう」


都内の風景を30分ほど走ると随分と景色が変わり、瞬間的に抜けていく風景がすごく綺麗で手を伸ばしたり乗り出したりしていたら窘められた。
はい、と行儀よく返事をして振り返ると、少し困ったような表情のリンが此方を見ていて噴き出してしまう。


「これじゃあ子守りみたいだねぇ」
「おや、まだ義務教育中でしたか」


窓を半分ほど閉めてリンを覗きこむと悪戯っこのように目を細めてそう言われて頬を膨らませた。


「冗談ですよ」


タイミング良く信号で車が止まると、大きな掌に頭をひと撫でされて頬が緩む。
ついこの間まで日常だったものが、なんだか泣きそうなぐらい懐かしい。


「子供だと思っていたらデートには誘いません」
「デート?」


車が発進すると同時にスッと視線を逸らされ、それを追いかけるように彼の横顔を覗き込んだ。
黒のカーゴパンツを履いて、グレーのTシャツの上に白い麻のシャツを羽織った彼は、普段の様相とは似ているようで違うけれど、すごく魅力的に映った。
身体のラインにピッタリとフィットしているパンツやシャツの上からでは、普段あまり分からない肉付きの良さや身体の滑らかさなんかもはっきり分かって、意識していない訳ではないけれどやっぱり男の人なんだなと感じた。

スーツ姿の彼もすごく大人っぽくて勿論好きだけれど、私服姿はそれとはまた別でなんとも言えない気持ちになった。


「違いました?」


端正な横顔に見惚れていると至極真面目な声でそう問われ、慌てて首を振る。
相手がリンなだけにただのピクニックではないだろうなとは思ってはいたけれど、さすがにデートだというつもりもなかった。でも彼がそう言ってくれるのならそうであったら良いと思うし、そうでありたいとも思う。


「あなたも知っている通り、子守りは苦手なんです」


くすりと笑った彼がことのほか楽しそうだったから、言い返そうと思って開いた口を大人しく噤んで一緒に笑った。
繰り返される言葉の応酬や麻衣に接する態度が子供に対するような扱いでも、手をつないで並んで歩いていれば傍から見たら立派なデートに見えるだろう。
彼はスタイルも良くて端正な顔立ちだし、たった一日でも想いを寄せている彼と恋人のように歩けるのならそれはそれで満足だった。

胸を張って素敵な恋人を見せびらかすように自慢げに歩いてしまおう。
そんなことを考えたら、いつもより意識して子供っぽく振舞い誤魔化していた緊張も霧散し、自然と笑顔が零れた。


「ね、リンさん。どこ行くの」
「着いてからのお楽しみ、ではいけませんか」


もう既にこの場所もどこだか全く分からないのだ。
今から聞いても分かるはずもないのだけれど、なんとなく訊いただけだったのでふるふると首を振る。


「それは良かった。きっと気に入ります」


そっか、と頷くと、彼は一瞬だけ優しい眼差しをくれてから車内時計をちらりと見る。


「ちょうど良い時間ですね」


彼につられて時計を見ると、時刻はもう少しで十一時半になろうという頃で、そんなに話しこんでいただろうかと首を傾いだ。

そういえば彼と居る時はいつもそうだったなと思い出す。
勉強を教えてもらっている時も、休憩のお茶をしている時も、買い出しに行く時も、一緒にベースで番をしている時も、会話があってもなくても、なんだかいつもすぐに時間が過ぎてしまう。
何故かなんて考えるまでもないことだけれど、それでも最初はすごく不思議だったものだ。

綾子に訊いた時は爆笑されたし、ナルには心底呆れたような顔をされた。
滝川にはひどい奇声を上げられたし、真砂子には頬を染めて逃げられた。
ジョンには頭を撫でられて、最後にやっと安原が教えてくれた。


――それはね、谷山さん。恋というものです。


ピッと人差し指を立ててウインクをかましてきた安原の表情は信ずるに足るものではなかったけれど、そうなのかも、と思ったら、それは意外とすんなり腹の奥にストンと落ちていった。
好きな事をしている時。
好きな人たちと居る時。
時間がたつのが早いとは思っていたけれど、リンと一緒に居る時はその比ではないのだというのはそれからの日々の検証で確認済みだ。


「なぁんかリンさんといると早いんだよね、時間。なんでだろ」


うーんと大袈裟に首を傾ぐと、彼は噎せたようで小さく咳き込んだ。
不思議そうな表情を作ってチラッと横目に見た彼の耳はほんのり赤く、してやったり、と心の中でガッツポーズを決め込む。
何度か抱き締められたりはしたけれど、いつも冗談っぽく誤魔化されてなんだか遊ばれているような感覚だったので、ことのほかスッキリした。


「だいじょーぶ?」


運転に支障はないようだったけれど、一応心配する素振りを見せて背中を数回擦って様子を窺うと、左手でそれを制されたので頷いて外の風景に目を移す。
そんなに標高は高くないようではあるけれど、車はいつの間にか山道を走っていた。


「もう着きますよ」


急なカーブを抜け、中途半端に舗装を施された横道を左に入る。
ガタガタと大きな車体を揺らせながら暫く真っ直ぐに進むと、かなり開けた場所に出た。

山道からは想像できないような広い駐車場で、既に何台もの車が停車している。
サイクリング用の自転車もかなりの台数駐輪してあり、駐車場から続く道の先には人がばらばらと歩いていた。
その更に先に『南沢植物園』と表示された大きな看板が、伸びた蔦や薔薇で飾られていて、見た目も綺麗だしわりとお洒落だ。


「わぁ、結構人がいっぱいだね。植物園?」
「手前は植物園ですね。少し歩きますが向こう側は高原になっているはずです。せっかく用意していただいた昼食もありますし、先にそちらへ行きましょうか」
「うん!」


どうやら無料らしい駐車場に車を停め、車窓を閉めて外へ出る。
真っ白な雲がぽつぽつと浮かんだ空はそれは綺麗な水色で、空を見上げながら思い切り吸い込んだ空気も都会とは違うような気がする。
沢山の木々に囲まれた駐車場にはゴミ一つ落ちていないし、微かに香る花や緑の香りが肺にいっぱいに浸透していくようだった。


「うーん、良い気持ち!」


ぐっと両腕を上げて伸びをすると、背後からスカートの裾をきゅっと引かれて振り返る。


「気を付けてください、見えますよ」
「だいじょぶだよ」


バスケットを右手に苦笑していたリンの左手を引き、早く行こ、と急かす。
いつの間にかシャツを腰に巻きつけていた彼は、困ったような笑顔を零した。


「すごい、綺麗だね」


周囲をきょろきょろと見渡しながらゆっくり歩く。
麻衣のペースに付き合ってゆっくり歩いてくれている彼が、小さく頷いた。

先ほど車から見えた大きな看板をくぐり、入場口を横に逸れた先の『南沢高原入口』と表記された看板の横を通り過ぎる。
休日ならでは、家族連れと思しき団体とすれ違ったり、仲のよさそうな老夫婦を通り越したりしながら、土ではあるものの平坦な道を歩く。
途中から随分となだらかな斜面に切り替わるが、生い茂る木々の瑞々しい青い香りに包まれて、時たま野鳥の声なんかが聞こえてきたりするのは本当に気持ちが良かった。

特に変わり映えしない風景の中、ふと腕を引かれ見上げると、彼が視線だけで左手を示す。倣って其方を見れば、木々の隙間からでかなり小さくはあるが、色とりどりの花壇が見えて足を止めた。


「うわ、いっぱいあるね、すっごいや」
「植物園の方は温室や種類の違う土、それに特別な肥料なんかを使用して、一年間を通してかなりの種類の草花が見られるそうです」
「早く近くで見たいね」
「食事を済ませたら行きましょう」


柔らかく微笑む彼に大きく頷いて再び歩き出した。
差し込む日差しもそんなに強いものではなく、ゆるやかな風が頬を撫でる。
繋いだ手はすごく暖かくて力強いし、時たま触れる腕がこそばゆかった。


「松崎さんが教えてくださったんです」
「ここ?綾子が?」


イメージとは程遠いこんな健全な場所を何故彼女が知っているのだろうかと目を瞬く。
巫女ならではの御神木探検ツアーとかだったら、帰ったら絶対にからかってやろうと思った。


「ハイキングのつもりで来てみたら、とんだピクニックだったと」
「なにそれ、ドジだなぁ」
「友人に誘われて下調べなしで来たようですね。場所を訊いておいて正解でした。そのお陰でこうしてあなたと一緒にいるわけですから」
「そっか。じゃあ、綾子のドジに感謝!」


おちょくるようにそう言って大きく頷くと、眩しそうに目を眇めた彼は悪戯っ子のようににやりと笑って頷いたのだった。





  1. 2010/07/06(火) 04:01:29|
  2. リン×麻衣
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