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恋煩い4

side-lin



「ひろーい!」


そう言うなり視界いっぱいに広がる緑の絨毯めがけて彼女は走りだす。
繋いだ左手がするりと抜けて、一気に体温が下がったような気がした。


「そんなに走ったら転びますよ」
「だいじょーぶ!」


均等に刈られた草の上をミュールで器用に走る彼女を、ゆっくりとした歩行で、しかし大股でなるべく距離が空かないように追いかける。
今にも草の上に転げそうな彼女をハラハラとした心持ちで見つめた。
そのうち本当に寝転びたいなどという意図をもってダイブしそうなほどのはしゃぎように、目許が綻ぶ。
動きやすい服装でスニーカーでも履かせてやれば良かったかと思ったけれど、鈴の音のように愛らしい笑い声を上げる彼女がスカートの裾をはためかせて走る様子を見れば、そんな考えも吹き飛んでいった。


「リンさん早くっ!向こうにおっきい木があるの」


そう言って一度立ち止った彼女は進行方向を指さしながら振り返ると、リンが頷くのを確認するなり再び走り出した。
遅れないように彼女を追いながら、ふと胸ポケットの存在を思い出す。
確か出掛けに彼女のデジタルカメラを入れた筈だと、腰に巻いていたシャツから片手で器用にそれを探り取り出す。
電源を入れ簡単に採光の調節をしてから、歩きながらレンズ越しに彼女を追いつつちょうど良い倍数を設定する。


「谷山さん」


そう大きな声でもなく呼び掛けたが、彼女は敏感に反応しその場でぴたっと立ち止まると、瞳を瞬かせて不思議そうな顔で振り返った。
その瞬間を逃さずにシャッターを切ると、陽の下でフラッシュが光り小さな電子音が鳴る。
それと同時に奇声を上げた少女が駆けてくるのがレンズ越しに見え、愛らしい少女が振り返る瞬間の画像をさっと確認すると、素早く保存して電源を落としズボンのポケットにねじ込んだ。


「リンさんっ、今のやだ!」
「大丈夫、きちんと可愛らしく写ってますから」
「嘘だっ」


頬を真っ赤に染めて憤慨する彼女の頭をぽんぽんと優しく叩いてみるが、ぶるぶると首を振って抵抗されてしまい、腰を屈めて目線を合わせた。


「嘘じゃありません。私が撮ったんですから」


幼い子供に言い聞かせるようにそう言うと、彼女は訝しげに首を傾ぐ。
全く納得いかないという表情の彼女に、芽生えた悪戯心がふわりと咲いた。


「理由を詳しく聞かせて差し上げましょうか?」


にやりと笑って彼女の頭に乗せた手を頬に滑らせると、彼女はびくんと身体を震わせて飛び退く。
こういう所だけは何故か勘の良い彼女は、そのままニコッと笑うと首を振って無言で歩きだした。
事細かに説明して彼女の狼狽する様を存分に見たかったのはやまやまだけれど、あまり追い詰めても目的を達成するまでに逃げられてしまいそうだ。
なんとも面白くないが仕方がない。


「残念ですね」


一歩後ろから彼女の耳元に小さくそう吹き込むと、彼女は顔を真っ赤にしてふるふると首を振った。
すぐにも走り去ってしまいそうな彼女の右手を逃げられる前に掬い上げ、彼女の目指していた大木へ向かい今度は二人で並んで歩き出す。

ピクニックシートの上で弁当を突いている家族や、小さなゴムボールやフリスビーで遊んでいる子供たち、日陰に並んで横になったり自分たちと同じように手をつないで散歩を楽しむ男女。
広々とした草原を見渡すと、言うほど多くもないが結構な人数が此方へ赴いているようだった。
そろそろ昼時ということもあるだろうが、これならば今の時間は植物園の方が空いているのだろう。
調べた限り園内には食事という程の食事処はないようであったし、このせっかくの天気だ、きっとそう時間も掛からずに訪れている人間のほとんどがここへ集まってくるに違いない。


「何か遊ぶもの、持ってくれば良かったねぇ」


結構な距離を歩いて辿り着いた大木の根元、紙袋から出した彼女好みの花柄のピクニックシートを協力して広げていると、子供たちの遊ぶ様を見ながら彼女がふわりと笑う。
彼女の事だからそう言いだすのでは思っていた矢先だったので、思わず吹き出してしまった。
それに怒るでもなく彼女は小さく笑うと、裸足でシートの上に降り立ち、草地に置いたバスケットを近くへと引き寄せ腰を下ろした。


「うわ、汚れたなぁ」


足を伸ばして座った彼女は自身の足のつま先を見るなり、きったなーい、とけたけたと笑った。
その汚れ様はなだらかな斜面を登っていたことよりも草原を駆けまわっていたせいであるようで、彼女自身の足よりもミュールの踵にべったりとこびり付いたほんのり濡れた土がそれを物語っている。


「食事の前に綺麗に拭いてしまいましょう」


ピクニックシートを入れていた紙袋を漁り、目当てのビニールの中からあらかじめ数枚用意していた濡れたタオルを取り出す。
スニーカーを脱いで腰に巻いたシャツを取り払い、彼女の横に片膝をついて小さな足に手を掛けると、彼女は盛大な悲鳴を上げて脚をたたんだ。


「いいいい、いいよ!自分でやるからいいっ!」


ぶるぶると首を振りながら真っ赤な顔で抗議する彼女に苦笑が漏れる。
ぐっと身体に引き寄せるように脚をたたむものだから、ワンピースの裾から太腿の大部分が覗いていて、非常に目に毒である。


「汚いから触っちゃダメ!」


譲るつもりはなかったが、彼女の困ったような、縋るような視線に負けてタオルを明け渡した。
汚いと思ったら手なんか出しませんよ、と溜め息混じりに小さくごちると、ぐいぐいと思い切りよく土をぬぐっていた彼女は顔を上げて照れたようにはにかむと、すぐに視線を落とす。


「ありがと。リンさんのそういうとこ、好き」


聞こえるか聞こえないかの声音でぼそりと呟いた麻衣に、リンは彼女の小さな身体を掻き抱きたい衝動を必死に耐えると引き攣った笑顔で頷いた。





  1. 2010/07/06(火) 04:07:09|
  2. リン×麻衣
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