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恋煩い5

side-mai



きちんと残さず食べてくれるのだろうなとは思っていたけれど、彼は驚くほど綺麗に中身をたいらげてくれたので麻衣は満面の笑みを零した。
バスケットを片付けて、お腹いっぱーい、と羽織ったカーディガンを脱ぎ捨てげんなり肩を落とした麻衣に、リンが珍しく小さく笑い声を上げ手招きする。
太い木の幹に背中を預け長い脚を交差させた彼の元へ四つん這いで近付くと、軽く脚を広げた彼にひょいと持ち上げられて、片腿の上に座らされた。
重いから、と慌てて身を引こうとしたけれど長い腕にぎゅっと羽交い絞めにされ、暖かい体温と鼻を擽る彼の香りに大人しくそこへ収まる。


「久しぶり、ですね」
「ん、そだね」


背中を抱えた腕を伸ばして頭を撫でられ、小さく頷く。
長い時間こうして二人でいるのも、抱きしめられたのも、再会したあの日以前のこととなると、本当に久しぶりだった。
彼は麻衣の腰をしっかりと捕まえていた掌を、脇腹から肩、二の腕、手首へと擽るように滑らせて、最後に辿り着いた麻衣の指先を絡め取る。
リンの大きな掌と長い指が自分の指先をすっぽりと絡め取るのに口元が綻んだ。


「変化した環境の中で、あなたは新しい友人に恵まれ、きっと全く変わった新しい生活を楽しんでいるのだと思っていました。私の手はもう必要ないのだと」


リンが言葉を紡ぐたびに額に押しつけられた彼の顎が動くので、軽く身体を捩って彼の首筋にすり寄った。
こめかみに彼のゆったりとした脈動が伝わってきて、満腹の麻衣を眠りに誘う。

彼を必要ないなどと思ったことはないのに、どうしてこんなふうになってしまったのだろう。
彼に寄せていた想いが恋だというのは分かっていたのに、恐ろしいほどそれに侵食され患っていたのだということは彼に再会したあの日まで全く気がつかなかった。

勘違いしてしまいそうなほどに構ってきたリンも、同じであったら良いのに。
そう願いを込めて、指先に絡んだリンの長い指を左手で絡め取り、彼の心臓の上に右手をそっと乗せた。


「私が浅はかでした」
「否定はしないけど」


つむじの辺りに頬を寄せられ、大袈裟な言葉と真摯な彼の声音に麻衣は肩を震わせてくすくすと笑う。


「友達も沢山出来たし、専攻の先生もすごくいい人なんだ。大学、楽しいと思う」


事務所やイレギュラーのみんなの手を借りて無事に入学した大学には、同じ高校からの生徒も多数在籍しているし、言葉に偽りもなく新しい友達だって増えた。
以前のようにどっぷりバイトに浸かる日々でもなくきちんと付き合いもあったので、人懐こく愛想の良い麻衣が周囲の人間と友好な関係を築くのは容易いことであった。
専攻した心理学の講義もとても興味深い内容のものばかりだし、その担当教授も優しく聡明で生徒からの支持も非常に高い素敵な人だ。
大学生活において不満など微塵もないし、もしあるとしてもそれは自分の身勝手だと分かっている。


「でもなんか違うの。リンさんのせいだよ」


何が変わったのかと考えれば、それはすぐに明確な意思を持って自分の中に浮かび上がる。
ずっと支えてくれていたリンが傍にいないからだ。
あの時の彼は自意識過剰ではないと言いきれるほどに麻衣に対して優しく甘く、それは麻衣が淡い希望を持って彼に接するのを大いに手助けし、そうして新しく始まった生活にどんよりと暗い影を落とした。


「すみません」
「それってどういうすみませんなの?」


噛み締めるように低い声音で謝罪の言葉を漏らす彼に、思わず声が強張った。
頭を撫でてくれていた彼の手の動きがぴたりと止まり、なんだか無機物が頭の上にただ乗せられているようなおかしな感覚になる。
落ちた沈黙に喉元を畏怖がせり上がってきた。
ああ、自分は本当に恋をしているんだ、と思った。
心臓がいつにない速さでどくどくと鼓動を繰り返す。
恋に患ったそこは酷く煩い。
彼の胸元に置いた手をぎゅっと握りしめる。早く時間が過ぎれば良い。


「気付いてあげられなくて。それと、あなたを一人にさせたことも」
「リンさんがいないと駄目にしたのはリンさんなんだから、ちゃんと責任とってくんないとやだよ」


苦笑と共に落ちてきた言葉に、間髪いれずにそう返す。
勢いよく見上げた彼の表情はとても優しくて、じわりと視界が歪んでいく。
声を上げて泣きそうになるのを息を詰めて堪えると、瞳に溜まった涙がぼろぼろと零れていった。
彼の表情は滲んだ視界では見えなかったし、輪郭すらも危ういそれを見ている事も出来なくて俯いた。


「そのつもりです」


暫しの沈黙の後、優しい声音と共に額に落とされた口付けにしゃくり上げる。
次から次へと溢れてくる涙は彼のシャツにじんわりと滲み、それぞれが形の違う濃いグレーの染みをいくつもいくつも作っていく。


「距離を置いたのはあなたの為だ。日に日に大きくなるあなたへの気持ちが、まだ先の長いあなたの枷になると思ったからです。でも、あの日あなたに会って、それは間違っていたのだと知った。あんなふうに泣かせると分かっていたら」


背中を支えていてくれた腕にぎゅっと抱きしめられ、彼との距離がこれ以上ないくらいに狭まる。
彼の胸元に額を擦りつけるような体制になると、絞り出すような熱い吐息が耳元を過ぎて身体が跳ねた。


「今からでも間に合いますか」


その言葉と共に絡めていた指先が解かれ自由になる。
彼の左手が濡れた頬をゆっくりと数回撫でて、拘束が緩んだと思ったら顎を持ち上げられた。


「あなたのことが好きです。ずっと前から」


未だ流れ続ける涙を掬うように彼の唇が目許に触れる。
何度も何度も啄ばむように繰り返されるそれにぎゅっと目を閉じると、目尻から目頭へ、鼻の頭へ、頬、そうして唇のすぐ横へと、彼の熱い唇が慈しむように移動してゆく。


「一緒にいたい」


駄目ですか、と少し困ったような表情の彼にすぐ間近で視線を絡め取られる。
そっと前髪を掻き上げられて、額と額がこつんと音を立てて触れ合った。


「いじわるだ」


彼の背中に縋りつくように腕を回して、小さく笑った。
駄目だなんて思ったりしない。
返事だってきっと分かっているはずなのだ。


「あなたの恋人にしてください」


麻衣はその言葉に目許を綻ばせると、ゆっくりとリンの唇へキスを落とした。





  1. 2010/07/06(火) 04:12:24|
  2. リン×麻衣
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