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恋煩い6

side-lin



彼女の唇は微かに触れただけですぐに離れていったけれど、それは今までのどの口付けよりも甘く愛しいものだった。
涙に濡らせた頬を染める彼女が、恥ずかしそうにはにかむ。
こうして彼女から触れられたことは以前に一度だけあったが、その時はすぐに逃げられてしまった。

臆することなく彼女に触れられるというだけではなく、自分が望めば彼女からも与えられるという立場を得られたのは、言葉では言い表せられないほどにとても幸福なことだ。


「あたしも、リンさんが好き」


彼女の声音が耳の奥に甘く響く。
涙で微かに強張った彼女の滑らかな頬に触れて、怖がらせないように再び顔を近づけていく。
もう少しだけ、と小さく囁くと、彼女はぱっちりと大きな瞳を見開いて、そうしてそっと瞳を閉じた。

瞼に指先で触れて、ふっくらとした彼女の唇に己のそれを重ね合わせる。何度も角度を変えて彼女に触れた。
噛みつくように、掠めるように、擦りつけるように、彼女の唇の形を確かめるように、何度も何度も。


「っふ、くるし」


ずっと息を詰めていたのか、唐突に顔を背けた彼女が肩を揺らして咳き込んだ。


「こういう時は、ここで息をするんですよ」


涙目で荒い呼吸を繰り返す彼女の背中をゆるゆると摩りながら鼻の頭をそっとつつくと、彼女は小さく唸って首を振った。


「だって、少しだけって、言ったのに」


むぅ、と頬を膨らませた彼女に見上げられ、首を傾いだ。


「少しでしょう?まだ途」
「も、無理っ!」


言いきる前にぶんぶんと首を振って、顔を真っ赤にした彼女が本当にやんわりと胸元を押し返してくる。
これしきの抵抗でどうなるものでもないのだけれど、思い切り拒絶しないだけ相応に彼女も自分を好きでいてくれるのだということが伝わり自然と笑みが浮かぶ。

正直まだ触れていたいし、触れるだけの口づけでは足りないぐらいだ。
強引に迫れば許してくれるのだろう、けれど、今はこれで我慢するとしよう。
こんなに可愛らしい恋人が手に入ったのだから。







「そんで、これはどういうことかなぁ」


不満げな彼女の声音に思わず苦笑を洩らすと、彼女の手を引いて歩き出す。
せっかく拭った脚が汚れるからと、思惑通りに暴れる彼女を抱き上げて駐車場まで戻ってきた。
やっと解放されたと思ったらこれだ、なんて不貞腐れている彼女を多少強引に植物園へと連れ出す。
ゲートを潜って園内をゆったりとした足取りで歩いていると、時折すれ違う人が麻衣の姿を見て不思議そうに首を傾いだり、小さく笑ったり、人懐こそうな夫人なんかは「あらあら、頑張って」などとリンに手を振ったりもした。


「全っ然見えないんですけど」


恐々と歩くその足もとに気をつけてやりながら、目許を覆ったハンカチをぐいぐいと引っ張る彼女の手元を窘めた。


「もう少しですから、我慢してください」


せっかく植物園にまで来てこれもどうかと自分ですら思うが、それでも彼女に喜んでもらえたらという想いからなのだし、ちょっとくらい目隠しをして歩かせたからといってどうなるものでもないだろう。
園内は目的の場所に着いてから帰りがてらにでも充分見て回れる広さだし、そう問題もない。
ただ少し、好奇心旺盛な人だかりがまばらに後ろを着いてきているだけで。


「良い匂いだね。この間買ってきた紅茶の匂いと似てるー」


視界が暗転している分、呑気にすんすんと鼻を鳴らせる彼女の鼻を悪戯に軽くつまんでやると、驚いた彼女は盛大に悲鳴を上げてつんのめった。
前方へ傾いた彼女の身体を咄嗟に受け止める。


「もうっ!びっくりしたぁ」
「すみません」


名残り惜しいが柔らかな身体をそっと離して真っ直ぐに立たせてやり、再び歩き出す。
あからさまにむっとした表情だった彼女も、ぎゅっと手を握れば照れたようにはにかんだ。

話しかけれるとふっくらとした頬にえくぼが浮かぶ。
聞こえる物音に整った眉を上げて窺うように首を傾ぐ。
強い香りの花壇の前では小さな唇を震わせて感嘆の声を上げる。
段差では不安そうに腕にしがみ付いて困ったように表情を曇らせる。

彼女が見詰めていることに気付かないのを良い事に、その多彩な表情や仕草を堪能しながらゆっくりと歩いた。

こんなふうに長い時間彼女を拘束したのは初めてで、自然と目許も緩む。
願わくば、この先ずっと彼女が傍らで笑っていてくれたら良い。



途中、園内で造花やリーフなどを販売しているテナントへ寄り、店頭で彼女に動かないよう指示すると注文していた花束を受け取る。
思ったより大きいそれを抱え彼女を振り返ると、店主である老人に無言でメッセージカードを差し出された。
暫し考え短く『happy birth day』とだけ書き添えると、店主に軽く会釈をしてラップと薄いピンクの包み紙の間にそれを挟む。


「お待たせしました」


急に触れて驚かせないよう静かな声音でそう声を掛けると、ぽつぽつとテナントの周囲に散っていた人間が感嘆の声を上げる。
訝しげに眉を顰めたが花束のせいかとすぐに思い至り、彼女に聞こえないように溜め息を吐いた。

遠巻きに見ている数人はこの先の行方が気になって仕方がないようだ。
どこかへ行って欲しいのはやまやまだが、彼女が居る手前、声に出してそう言う訳にもいかない。
小さく息を吐くと、野次馬に向かい唇に人差し指を当てて黙っているようジェスチャーする。


「行きましょう」


花束を背中に隠すようにして、不安そうに立っている彼女の肩に手を回す。
促されるがままに歩き出したその肩をぎゅっと引き寄せると、羞恥で小さな身体を強張らせた初心な彼女が小さく悲鳴を上げた。






  1. 2010/07/06(火) 07:56:20|
  2. リン×麻衣
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