FC2ブログ

secret heart plus

さきっぽのGH二次創作ブログへようこそ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

恋煩い1

side-mai



ピクニックに出掛けませんか、と誘ったのは彼から。
そうして、お弁当を持って行こう、と提案したのは彼女から。



今年の春、無事に大学へと合格した麻衣は、今やバイト三昧の日々を過ごしているわけもなく、かといって勉学に一途な辛い日々を送っているわけでもなく、中途半端な生活を強いられていた。
心理学を専攻した麻衣に大層上機嫌だった上司は、将来の為になるべく学業に専念するようにと必要最低限の呼び出ししかしてこないし、家で出来るような作業しかさせてくれなくなった。
大きな調査の時には勿論呼び出しも掛かるが、気楽にとまではいかないまでも、好きな時に好きなだけバイトが出来た日々は本当に幸せだったなと思ってしまう。
まだ大学生活を始めて二ヶ月しか経っていないというのに、イレギュラーのメンバーたちと会える回数も激減し、皆社会人であるが故に、ではプライベートで…ともいかない微妙なすれ違いがもどかしかった。
そんな中、この短期間のうちに全員が必要になる大きな依頼や調査、事件がタイミング良く舞い込んでくるはずもなく、麻衣はただ悶々と大学を中心とした生活を続けていた。


フラストレーションが積もりに積もったある日、たまたま街角ですれ違いそうになったリンの姿を発見し、しかもすぐさま自分を見つけてくれるものだから思わず涙が零れてしまった。
自分でも何を言っているのか分からないまま、仕事中の彼を相手にくどくどと訳の分からない愚痴を延々と聞かせてしまった。
初めはぐずぐずといつまでも泣き止まない麻衣に戸惑っているようだったが、そのうちに近くの喫茶店へと誘ってくれて、気が済むまで――というか、陽がどっぷり落ちて麻衣が我に返るまでずっと付き添ってくれたのだった。


――ピクニックに出掛けませんか?


じゃあまたね、と身を翻した別れ際、腕を強く引かれてそう言われた時は呆然としてしまった。
ピクニックという単語や行為がこれほどまでに似合わない男性がナル以外に果たして居るのかと問われたら、迷いなく次に思い浮かぶのは彼である。
しかしきょとんと目を丸くする麻衣に辛抱強くもう一度同じ言葉を紡いだリンの表情が、小さな子供が迷子になったかのような不安そうなものであったから…麻衣は即座に何度も頷いてしまったのだ。


ずっと一緒に居てくれた彼の言葉は少なかったけれどとても優しさに溢れていたし、そう誘ってくれたのも麻衣を気遣ってのことだろう。
大学に合格するまでも、彼は決して嫌な顔一つせずに勉強をみてくれていたし、その後も入学するまでの期間、大興奮の滝川や綾子に混じってやれスーツだ鞄だ靴だ学用品だのと、有り得ないぐらいに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたのである。
それが大学に通い始めた途端にぱったりと途絶え、会うのは週に一回行くか行かないかの事務所でだけだった。
それですら雑用に少しの時間顔を出す程度であったから、リンの顔を見れずに帰る日の方が多かった。



麻衣が頷くのを見た途端、彼が安堵の表情を浮かべるものだから、嬉しくて嬉しくて、全部出し切ってしまったと思った涙がまた零れそうになるのを堪えるのが大変だった。
会えない期間、まさかあまりにも面倒を掛けたものだから嫌われてしまったのではないかと幾度頭を悩ませたことだろう。


――じゃあ、お弁当持って、普段行かないような場所まで行きたいなぁ。


懸命に涙を堪えながら小さく首を傾げて笑う麻衣に、リンは快く頷き、そうして現在に至るのであるけれど。



その麻衣はというと、大学生にもなって女の子が共同の風呂とトイレじゃあんまりだ、という滝川と綾子の父母を思わせるような怒涛の説得に押し切られ、やっと引っ越したワンルームの部屋のど真ん中でぐったりとしゃがみ込んでいた。


「どうしよ」


カチカチと音を立てて秒針を進める時計を憎々しげに見つめながら呟く。
菜食主義者であるリンのための弁当は完璧だし、メイクも不自然にならない程度に可愛らしく仕上がったと思う。
しかし昨日から全くもって決まらない服に埋もれながら、麻衣は幸せが悲鳴を上げて逃げていきそうなほどに深々と溜め息を吐いた。
当日になれば否が応でも決まるものだと決め込んで昨夜は早くに就寝したのだが、それが間違っていた。


「最悪だ」


携帯にセットしたアラームがけたたましい音を部屋中に鳴り響かせる。
きっと普段からしっかりとしている彼のことだから、時間通りにマンションにやってくるに違いない。
泣きそうになりながらベッドの上で小刻みに震える携帯を手に取った瞬間、控え目なノックの音が耳に届いた。


寝間着のハーフパンツにTシャツ。

客人を、しかも心を寄せる彼を迎えるにはあまりに酷い格好だと思ったが、無視しているわけにもいかない。


「はーい!」




ドアの向こうまで届くように声を張り上げた麻衣は目と鼻の先である玄関へ、申し訳ない気持ちと羞恥心をもういらないと手放してしまいたくなるほど胸に抱えて立ち上がった。





  1. 2010/07/06(火) 03:27:40|
  2. リン×麻衣
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<[お知らせ]孤高の花について | ホーム | [お知らせ]恋煩いについて>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://secretheartplus.blog92.fc2.com/tb.php/3-8f679dc7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。